杉江寿文さん器と暮らしの道具 morrinaINTERVIEW

  • まずは、お店(施設など)について教えてください。

    「時のふるいにかかる器」と表現していますが、使い手さんの暮らしの中で末長く大切にできる器を取り扱えたらと思っています。この仕事は、作り手が器の込めた想いを「言葉に翻訳」して伝えること。作り手に「この店なら自分の想いを受けて止めてくれる使い手に渡してくれる」と信頼して貰える様心掛けて行きたいと思います。
    私は作品に、この土地であるべき必然性と作り手の想いが器から伝わってくるものに共感します。それらの想いがしっかり込められたものを共感して頂ける使い手さんに手渡していきたいですね。
    ちなみにここは、空き家ではありませんでした。なので、古い建物を使っての一例ということで聞いてください。建物の改修は必要最小限にとどめています。柱もそのままです。といっても、壁を左官さんに塗ってもらったり、それなりに手はかかっているんですが(笑)。それがあからさまにならないよう、見た目は控えめに仕上げています。

  • この場所ではじめることになった経緯は?

    自分が描くものをかたちにしたいという想いで、しばらく作陶にも関わっていましたが、当時の自分の状況に納得することができず、本当は何をしたいのか自問し、「作るのではなく、自分が心動かされた作り手の作品を紹介したい」という結論に至りました。「売る」ことだけが独り歩きしていることも多く、常滑が本来持っている価値が埋もれているように見えたのです。ただ用途として制作されたものにはない、別の価値と魅力を伝えたかった、とも言えると思います。
    当初は親が経営する陶磁器ギャラリーで手伝いをしていたのですが、2011年に独立してmorrinaをオープン。 自分が心動かされたものを集めた場所を作るのなら、先のギャラリーからは少し離れたほうがいいだろうと考えていたところ、 陶芸作家さんにこの建物を紹介していただきました。

  • 常滑はどんなまちだと思いますか?

    常滑焼が茶陶を手がけず、時代によって革新を繰り返してきたこともあってか、権威にとらわれないリベラルな雰囲気がありますね。 変容的で自由であることは、一見すると雑多な印象に繋がりますが、それがこの街の特徴と魅力だと思っています。日本は多くの分野で古くから大陸から文化を学び、近代は西欧の技術を取り入れ発展してきたこととよく似ています。
    人を受け入れる懐の大きさも常滑の特徴です。常滑の陶芸は師弟関係をあまり意識しません。 ただし、手取り足取りは教えてくれない。好きにやっていいけど、自ら切り拓け、と。自由と自律、そして自覚を尊重する風土なんですね。

  • これから古い建物を活用したいと思っている方へ

    常滑は寛容性を持った街です。ある人はタイムカードがない街、と表現しました。私のようないい大人が、 平日にごくカジュアルな服装で歩いていても、何も言われません(笑)。人それぞれの生き方を受け入れてくれる器の大きさとも言えるでしょう。
    窯業に限らずですが「新しい価値提案をしてみたい」、「自分の価値観を大切に暮らしたい」といった想いを形にしていくにはとてもいい場所だと思います。何か新しいことを始めたり、人と違った生き方をしようとすると多くの困難が立ちはだかります。その困難を受け入れる覚悟があるなら、ここはとてもいい場所だと思います。

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